これでわかる!農地転用をケースごとに紹介・詳細解説|所有権移転編
農地転用の実際どのような場面にどういったケースがあるのかなかなか慣れてくるまでは、わかりづらいものなのでケース別に詳細解説いきたいと思います。
※令和5年4月より農地法第3条許可の下限面積の制限が撤廃されました。
目次
- 農地を建売住宅用地として売買
- 農業振興地域、分家住宅
- 太陽光発電施設
- 第1種、コンビニ用地
- 2a未満農業用倉庫
- 農業用土耕ハウス
- 看板設置
- 市街化区域、それ以外の同時転用
- 転用未実施の農地の購入
- 相続未登記の農地の転用
- 既存施設の拡張(第1種)
- 農用地区域の経営するビニールハウスの隣接農地の転用
- 農産物販売施設の設置
- 携帯用電波塔の設置
- 農地での植林
- 転用と分筆
※当事務所では、農地転用業務を取り扱っております。
農地転用の許可の要否・ケース別考察
(1)市街化調整区域の農地(農用地区域ではない)を建売住宅の土地として、業者に売買する場合
市街化調整区域の農地転用は、法4条または5条の許可が必要になります。
また、市街化調整区域での開発行為には、原則都市計画法29条の許可が必要となり、農地転用と同時に許可がされる仕組みとなっております。
通常、市街化調整区域での建売住宅の建設は、開発行為に該当するため、開発許可が必要になりますが、現時点で既存宅地の制度も廃止となっているため、市街化調整区域での開発許可は得ることができません。
よって、農地法5条の許可も得ることができないと判断されます。
但し、市町村によっては条例で定められた区域について一定の要件のもと開発が認められる場合もあります。
農業振興地域の農用地区域:市町村が将来農業上の利用確保すべき土地として指定した区域を指します。農業振興地域であっても、農用地区域でなければ農地転用は可能です。
市街化調整区域:住宅や施設などを積極的に作って活性化を行わない地域であり、市街化を抑制する地域のことを指します。
(2)農業振興地域の農用地区域の農地のみ所有、分家住宅用地として、農地転用する場合
農業振興地域の農用地区域は、長期にわたり、農業上の利用を確保すべき区域であり、かつ農業公共投資を集中して行う区域であることから、原則農地転用は不可とされています。
しかし、例外として、農用地区域にしか設置することができず、さらに集団農地の集団化に支障を及ぼさない場合に限り、農用地区域除外申請をしてから農地転用をすることができます。
当該ケースでは、農用地区域のみ所有しており、農業の後継者の住宅を建設することが農地転用の目的とされていることから、周辺農地の集団化に支障を及ぼさないのであれば農振除外申請が可能であると考えられます。
(3)農地に太陽光発電施設を設置する場合
第1種農地の場合
第1種農地は、優良農地として、原則農地転用ができない区域とされています。
例外として、市街地に設置することが困難又は不適当なもの等は第1種農地に設置することができるとされています。
第3種農地
第3種農地は、市街地の区域内又は市街地化に傾向が著しい区域内の農地であるため、立地基準上、農地転用が可能となります。
立地基準以外の一般基準として、次の要件も満たす必要があります。
- 申請に係る農地を農地以外のものにすることにより周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないこと
- 申請に係る農地の面積が事業目的からみて適正であることと認められること
農用地区域で営農型の太陽光発電施設
支柱を立てて営農を継続する太陽光発電施設については、農林水産省の通知「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備について農地転用許可制度上の取り扱いについて」により、良好な営農条件を備えている農用地区域や第1種農地においても、設置が可能であるとされています。
営農型の場合支柱部分等の農地を一時転用する手続きをするのですが、一時転用の許可を取得するためには、次の要件を満たす必要があります。
- 一時転用期間が3年以内
- 簡易な構造で容易に撤去できる支柱として面積が最小限度
- 下部の農地が営農継続が確実で、日照量を保つ設計となっており、農作業に必要な農業機械等が効率的に利用して営農するための空間が確保されていること
- 農用地区域内における集団化や農作業の効率化等の利用に支障を及ぼすことがないこと
- 営農型設備を撤去するのに必要な資力、信用があること
- 電気事業者と契約を締結する見込みがあること
下部の農地の農作物の状況等について、毎年報告する義務が課されることに注意が必要です。
その中で、営農が行われていなかったり、下部の農地における単収が同じ年の地域の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少していることや農作物の品質の劣化、農業機械の効率化が困難であるといった状況であると判断された場合には、許可を取り消す措置がされることになります。
(4)第1種農地をコンビニエンスストアの用地として農地転用を申請する場合
農地の転用許可の立地基準で分類される第1種農地は、
- 10ha以上の規模の一団の農地の区域内にある農地
- 土地改良事業等が実施された区域内にある農地
- 自然的条件からみてその近傍の標準的な農地を超える生産をあげている農地
と規定されています。
これらは、原則、農地転用ができないとされています。
例外として、流通業施設、休憩所、給油所等の施設で一般国道や都道府県の沿道、もしくは、高速自動車国道その他の自動車のみの交通の用に供する道路の出入口の周囲300m以内の区域内に設置されるものは、その第1種農地以外に設置することでは、その目的を達成することができず、かつ、周辺農地の集団化に支障を及ぼさないことが認められれば、設置は可能とされています。
本ケースのコンビニエンスストアは、上記の要件以外に農林水産省の通知の要件を満たすのであれば、農地転用の許可が取得可能な案件であるといえます。
農林水産省の通知:主要な道路の沿道において周辺に自動車の運転者が休憩のため、利用することができる施設が少ない場合には、駐車場及びトイレを備え、休憩のための座席等を有する空間を備えているコンビニエンスストア及びその駐車場が自動車の運転者の休憩所と同様の役割を果たしている場合
(5)農地に2a未満の自己用の農業用倉庫は建てる場合(農用地区域外)
本来であれば、自己所有の農地に自己の倉庫等の構築物を設置する場合は、農地法4条の許可もしくは届出が必要となりますが、自ら使用する200㎡未満の農業用施設であるならば、農地転用手続きは不要であるとされています。
ただし、不要であるといっても、多くの市町村では設置する前に事前に農業委員会に連絡する必要がある点に注意が必要です。
これは、無断転用に当たらないことの連絡、または市街化区域等であれば、生産緑地や相続税等納税猶予制度適用農地で設置可能な施設かの確認となるためです。
また、市街化調整区域等の農地においては、農業用倉庫兼作業場の建設が開発行為にあたる可能性もあるので注意が必要です。
(6)農業用土耕ハウスを建設する場合
施設園芸用地の農地法上の取り扱いについては、平成14年4月1日に出された農林水産省の通知に一定の判断基準が示され、その中では農地に形質変更を加えず、農作物の栽培用資材等を設置して農作物の栽培を行っている土地は、農地転用の許可を取得する必要がない旨が示されています。
よって、このケースでは、農地に形質変更を加えず、農作物の栽培用資材等を設置して農作物の栽培を行っている土地に当たると想定されますので、農地転用の手続きは不要であると判断されます。
但し、その農地が市街化調整区域等にあたる場合には、鉄骨農業用ハウス等の建設は都市計画法29条の開発行為に当たる可能性がありますので、注意が必要です。
都市計画法 第29条
第1項 都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(w:地方自治法 (昭和22年法律第67号)第252条の19第1項 のw:指定都市、同法第352条の22第1項 のw:中核市又は同法第252条の26の3第1項 のw:特例市(以下「指定都市等」という。)の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この節において同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの
二 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの
三 駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
四 都市計画事業の施行として行う開発行為
五 土地区画整理事業の施行として行う開発行為
六 市街地再開発事業の施行として行う開発行為
七 住宅街区整備事業の施行として行う開発行為
八 防災街区整備事業の施行として行う開発行為
九 公有水面埋立法 (大正10年法律第57号)第2条第1項 の免許を受けた埋立地であつて、まだ同法第22条第2項 の告示がないものにおいて行う開発行為
十 非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
十一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
第2項 都市計画区域及び準都市計画区域外の区域内において、それにより一定の市街地を形成すると見込まれる規模として政令で定める規模以上の開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
一 農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
二 前項第三号、第四号及び第九号から第十一号までに掲げる開発行為
第3項 開発区域が、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域又は都市計画区域及び準都市計画区域外の区域のうち二以上の区域にわたる場合における第1項第一号及び前項の規定の適用については、政令で定める。
引用:都市計画法29条 Wiki books
(7)農地に看板を設置する場合
農地に看板を設置する場合、市街化区域かそれ以外かで取り扱いが異なります。
市街化区域以外では、農地転用の許可取得が必要となりますが、市街化区域では、転用の許可は不要となります。
また、農地の転用許可の取得にあたっては、一般基準である次の規定に基づく要件を満たす必要があります。
- 申請に係る農地を農地以外のものにすることにより周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないこと
- 申請に係る農地の面積が申請に係る事業の目的からみて適正と認められること
また、市街化調整区域においての看板の設置する場合には、開発行為の許可を同時に得る必要があります。
ここで注意が必要なものとして、看板が商業用のものである場合、市街化調整区域での開発行為許可を得ることができない行為に通常該当するため、農地の転用もできないことになります。
(8)市街化区域とそれ以外の農地の同時転用する場合
農地法5条の許可の一般基準には、次の要件があります。
- 申請に係る農地を農地以外のものにすることにより周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないこと
- 申請に係る農地の面積が申請に係る事業の目的からみて適正と認められること
市街化区域とそれ以外の農地を一体として同じ目的で利用する転用事業計画では、市街化区域とそれ以外の農地を一括して審査されることが一般的となっています。
ですので、市街化区域以外の農地の転用許可が取得できない場合には、市街化区域の農地について、届出ですることができる場合であっても転用の実現ができないことになります。
(9)転用未実施の農地を転用目的で購入した場合
市街化区域の場合
市街化区域において所有権の移転をする農地転用の目的で法5条の届出をし、受理通知書が交付された後に、当時者がまずその農地の所有権移転登記をし、その後に転用事業に着手するという流れが一般的です。
もし、譲受人が所有権を取得した後に、転用事業に着手しなかった場合には、構築物などがなく、現況が農地とみなされるのであれば、市街化区域では、新たに農地法5条の農地転用の届出が必要となります。
また、その農地に構築物等があり、現況が農地とみなされない場合には、登記官への照会や農地委員会が交付する農地転用届出受理済証明等により地目変更をし、その後、所有権移転の手続きをする流れになります。
市街化区域以外
市街化区域以外では、所有権移転をする転用事業計画では、農地法5条の許可を得た農地は、当事者がまず所有権移転の登記をし、その後に転用事業に着手するのが一般的な流れになります。
もし、譲受人が所有権を取得した後に転用事業に着手しなかった場合には、第三者が当該土地を譲受人から取得し、別の目的の転用事業を行おうとするのであれば、まずは、農地法3条違反にあたらないか農業委員会に確認をとる必要があります。
その後に新たな転用事業に着手することが可能であった場合は、農地法5条の許可後の計画変更申請等を行う必要があります。
また、場合によっては、新たに農地法5条の許可を得る必要がある場合もありますので、注意が必要です。
(10)相続登記が済んでいない農地を転用する場合
農地転用の許可申請や届出は、その農地の権利者のみが行え、添付書類として土地の登記事項証明書が必要となります。
相続登記が済んでいない場合には、戸籍謄本等を添付し、法定相続人全員の連名により農地法5条の許可申請や届出を行うことは可能となります。
また、遺産分割協議書が作成されている場合は、遺産分割協議書に基づく相続人による申請や届出をすることが通常可能とされております。
その場合の添付書類として、遺産分割協議書の写しが必要となります。
(11)既存施設の拡張のため、第1種農地を転用する場合
農地転用の立地基準における第1種農地は、優良農地として、原則農地転用ができない区域となっております。
ただし、第1種農地においても、例外的に農地転用が可能な場合が次のように農地法に規定されています。
- 既存の施設の拡張(拡張に係る部分の敷地の面積が既存の施設の敷地の面積の2分の1を超えない場合に限る)
上記の条件を満たし、かつ申請に係る農地を農地以外のものにすることにより周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないこと及び申請に係る事業の施行に関して行政庁の免許、許可、認可等を得られる見込み等があること等の一般基準を満たせば、農地法5条の許可取得の可能性があるものといえます。
(12)経営するいちご栽培ハウスの隣接農地(農用地区域)を駐車場として転用する場合
農業振興地域の農用地区域は、原則、農地転用ができない区域ですが、農業用施設等は、農用地区域であっても、用途区分を変更し、転用許可を得れば、設置することが可能な例外の対象となります。
農振地域法3条4号に規定する農業用施設について、次のように規定されています。
- 「農業用施設等の管理又は利用のために必要不可欠な駐車場、便所」
上記のことから、当該ケースでは、農業振興地域整備計画の農用地区域に定める農業上の用途区分を農地から農業用施設用地に変更した後、農地法4条の許可取得の申請をする流れとなります。
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(13)農用地区域の農地に農産物の販売施設を設置するため、転用する場合
農業振興地域の農用地区域は、原則、農地転用はできませんが、農業用施設等は、農用地区域であっても用途区分を変更し、その後農地転用の許可を得て、設置することができます。
農振地域法の農業用施設の一つとして、次のように規定されています。
- 「耕作の業務を営む者が設置し、主として自己の生産する農地畜産物等又は自己の生産する農畜産物を原料として製造され若しくは加工されたものの販売の用に供する施設」
また、農林水産省の通知の「農業振興地域に関するガイドラインの制定について」にて、自ら生産する農畜産物等の使用の割合が他の農畜産物よりも量的又は金額的に多いものであれば農業用施設とみなされるとの基準が示されています。
上記のことから、当該施設がこれらの要件を満たしているということであれば、まずは農業振興地域整備計画の農用地区域に定める農業上の用途区分を農地から農業用施設用地に変更した後に、農地法4条の許可申請を行う流れになります。
(14)農地に携帯電話用の電波塔を設置するのに、転用する場合
農地に携帯電話用の電波塔を設置するのは、農地法5条許可の例外に当たります。
農地法5条の例外(規53十四)
認定電気通信事業者が有線電気通信のための線路、空中線系若しくは中継施設又はこれらの施設を設置するために必要な道路若しくは索道の敷地に供するため権利等を取得する場合
ただし、周辺農地への影響等を考慮し、「認定電気通信事業者の行う中継施設等の設置に伴う農地転用の取り扱いについて」の通知にて、事前に事業計画を農業委員会に提出し、調整することが示されています。
(15)農地に植林をする場合、転用許可の有無
農地に植林をする場合、農地から農地以外への転用に当たるため、農地法4条、5条の許可又は届出が必要となります。
許可書又は受理通知書が交付された後、「山林」への登記地目の変更は、一定期間を経て、現況が山林と認識されるまでは、登記法上できないとされています。
また、植林生産や果樹の栽培に使用している土地は、現況農地とし、既に山林化している農地は、原則、植林を目的とした農地転用の許可申請はできないとされています。
この場合は、非農地証明などの申請によることが望ましいと考えられます。
(16)農地の一部を自己転用する場合の分筆の有無
農地転用において、その農地の転用面積や場所を正確に確定することは必要ですが、分筆をすることを要件としている規定はありません。
一部を転用する場合、農地法4条の許可申請の前に測量等により性格な農地転用の面積と場所を確定し、許可申請時にその図面、測量図等を添付すれば、分筆は必要ないと解せられます。
ただし、農地法5条の農地転用(所有権移転)の場合は、分筆がされないと所有権の移転等の登記ができませんので、事前に分筆が求められる場合もありますので注意が必要です。
まとめ
ケース別に解説してきましたが、まだまだ紹介できたのは一部です。
次は、賃貸借の場合のケースも紹介していきたいと思います。