実務家必見!?相続において誤認しやすいケースまとめ

子供母

今回は、相続における誤認しやすいケースをピックアップしてご紹介していきたいと思います。

目次

相続関連

  • 夫婦の一方養子縁組
  • 賃借物件引き払い後の相続放棄
  • 債務超過時の自宅、事業用資産の取扱い
  • 相続放棄後の特定遺贈の取扱い
  • 限定承認
  • 相続放棄後の相続税控除

遺言書関連

  • 一切相続させない文言
  • 私道の取扱い
  • 有価証券・預金・株式の記載の注意点
  • 遺言無効の判決時の訴訟費用
目次

(1)相続関連ケース別

おはなしばばあ

・夫婦一方のみを養子縁組としている場合

夫婦の一方とのみ養子縁組をしている養子でも、養親の配偶者の相続について相続権が認められる。夫婦の一方のみ養子縁組をしている養子には、養親の配偶者の相続についての相続権は認められない。

・賃借物件を引き払った後の相続放棄の取扱い

マンションの賃貸借契約の解約は保存行為であるため、相続放棄との関係でも問題はない。マンションの賃貸借契約の解約は処分行為とされる可能性があり、有効な相続放棄ができなくなる可能性がある。

補足:

熟慮期間内であれば、相続人は、家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行うことで相続放棄をすることが可能ですが、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分」した場合は単純承認したものとみなされ、以後、有効な相続放棄はできなくなります。

マンションの賃貸借契約は、債務の増加を防止するという点に着目すれば、保存行為と評価される可能性もあるが、賃借権を消滅するという点においては処分行為と評価される可能性もあるため、結果的に相続放棄をしなかった場合、無駄な債務を負担する結果となりますが、上記のリスクから相続放棄をするか否かについて確定するまでは、相続人から賃貸借契約の解約を行うべきではなく、相続放棄後に事務管理として賃貸借契約の解約をおこなうべきである。

・債務超過の場合、自宅や事業用資産の取得の可否

相続人資格全員に相続放棄をさせたうえで、相続財産管理人選任の申立てを行い、選任後の相続財産管理人から買い取る方法のみ。確実に取得するには、限定承認をしたうえで、先買権を行使する。

※先買権(民法第932条但書)・・・家庭裁判所が選任した鑑定人の評価した価格を支払うことで当該財産を取得することができる権利であり、限定承認者のみが行使できる権利。

限定承認をする場合、譲渡所得税が問題になりますが、譲渡所得税が課税されるのは、あくまで被相続人であり、もともと債務超過のため、相続人が不利益を被ることはないと考えられます。

・相続人が相続放棄をしつつ遺贈により遺産を取得の可否

相続人であっても遺贈を受けることは可能であり、その場合でも、法律上、相続放棄を制限する規定がない以上、相続放棄をして相続債務の支払義務を免れることは当然可能である。相続人が相続放棄をしつつ特定遺贈により遺産を取得することによって相続債権者が害される場合には、詐害行為取消権の対象とされたり、権利の濫用と判断されるリスクがあることに注意。

・限定承認の注意点

遺産の調査が十分に行えていない場合でも限定承認をとりあえずすべきである。安易に限定承認をするべきではなく、熟慮期間の伸長も含め、可及的に遺産の調査を行なったうえで単純承認か限定承認をすべきである。
補足: 限定承認をした場合、被相続人から相続人に対して、相続開始時に、時価で遺産の譲渡があったものとみなされ、被相続人に譲渡所得税が課されます。そのことから、実際に資産超過であったにもかかわらず、限定承認に伴い譲渡所得税が課税されてしまったがゆえに、債務超過になる可能性があります。

限定承認はに伴う譲渡所得税の申告は準確定申告であり、相続人が相続の開始があったことを知った日から4か月以内に行う必要があるため、熟慮期間の伸長には、注意が必要です。

・相続放棄時の相続税基礎控除で有利不利

相続税法では、課税最低限5000万を3000万円に引き下げ、他の全員が相続放棄の申述すると、3600万円の控除になってしまうため、放棄をせず、事実上相続しないほうがよい。相続放棄申述申立てを受理されても相続税の基礎控除の計算には何ら影響を及ぼさないので、相続放棄申述申立てをして、受理されれば、受理証明書を相続人に交付するのがよい。

(2)遺言書関連ケース別

本草

・「一切相続させない」という遺言の文言の取扱い

三男には一切相続させないとの記載は、三男の相続分を0とする相続分の指定と解釈して処理できる。三男には一切相続させないとの記載は、三男を廃除する趣旨とも解釈し得るため、遺言執行者は、可能な範囲で遺言者がかかる記載を行うに至った背景事情等を調査し、遺言者の真意を探求した上で処理する。

・遺産の中に私道がある場合、遺言書に書くべきか否か

遺産の中に私道がある場合、私道は従物として主物たる遺産の取得者が当然に取得すると考えられるから、別に遺言書に記載しなくてもよい。私道を構成する敷地も遺産である以上、ある相続人に相続させたいのであれば遺言書にその旨を記載する必要があり、遺言書に記載がない場合には、当然には私道を取得できず、遺産分割協議によって取得者を決める必要がある。

・遺言書に「有価証券」「預金」「株式」等を記載する場合

遺言書を作成する場合、対象財産の特定は細かく記載したほうがよい。細かく特定しすぎて、遺贈の対象から外れるケースがあるので、注意。

※遺言書を作成する場合、残高証明書等に基づいて、漏れなく正確に記載するか、又はその後に取引内容の変動があることを予想して逆に包括的に記載することがよい。

・遺言執行者の提起した訴訟が遺言無効で却下された場合の訴訟費用は、誰負担になるか

遺言の無効を理由として訴えが却下されてしまった場合、訴訟自体は、遺言執行者として提起したものであるから、訴訟費用は、遺言執行費用として精算が可能。遺言は無効であるから、遺言執行費用として精算することはできず、訴訟費用は遺言執行者が負担すべきものと考えられる。

※遺言執行者の権限は、遺言の執行に関する事項であり、遺言執行費用については、民法第1021条が「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。」定められているため、遺言執行者の権限内の行為について生じた費用については、遺言執行者が、預金の払戻し等を受け、既に自己の管理下のに置いた相続財産から控除することが認められていることになります。

まとめ

代襲相続とは

相続は、一般の方にも身近なことですので、気をつけていただきたいを思います。

順次ケースを更新していく予定ですので、お手すきの際に閲覧いただければ幸いです。

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