民法改正で時効がかわる!?要点を徹底解説

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2020年4月より民法総則と民法債権法が改正されます。

かなり条文もかわり、複雑になっており,今まで民法の条文を知っていた方も取っ付きづらくなっています。

そこで、今回は、

  1. 言葉の文言が変わる!|新旧比較表で確認
  2. 新しく追加された時効の完成猶予事由
  3. 消滅時効の二重期間化と契約責任との関連性
  4. 人損と物損との消滅時効期間の違い

について解説していきたいと思います。

目次

1.言葉の文言が変わる!|新旧比較表で確認

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1.言葉の表現の変化と対象の種類の変更

民法の改正に伴い、次のように言葉の表現がかわります。

  • 時効の中断→時効の更新
  • 時効の停止→時効の完成猶予

これにともない今まで時効の更新に該当していたものが時効の完成猶予に該当することになったりとかなり変わっています。

旧時効の中断事由:請求、差押え、仮差押え、仮処分、承認

新法の時効の更新事由:承認のみ

新法の時効の完成猶予事由:請求、差押え、仮差押え

2.新旧比較表で詳細確認

旧法の時効の中断事由・停止事由      新法の変更点
 

 

請求

裁判上の請求  

時効の完成猶予

更新時期:確定判決等により権利確定した時は完成猶予事由終了時(147条)
支払督促
和解、調停
破産手続き参加
催告 6か月猶予(150条)
差押え等 差押え 更新時期:強制執行終了時(148条)
仮差押え仮処分 6か月猶予(149条)
承認 時効の更新
天災等による時効の停止(2週間) 天災等による時効の完成猶予(161条):

障害が消滅したときより3か月

新設、又は条文上明言されたもの
強制執行、担保権の実行 時効の完成猶予 更新時期:強制執行等が終了した時
協議を行う旨の合意(新設) 時効の完成猶予(151条)双方1年一方6か月

※判例により中断事由とされていた民事執行法による配当要求は差押えに準ずるものとして時効の完成猶予に、債務の分割弁済の約束は承認に準ずるものとして時効の更新に該当するものと考えられます。

2.新しく追加された時効の完成猶予事由

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1.要式と猶予期間

新しく時効の完成猶予事由として前述した記載した表にもある「協議を行う旨の合意」というものが追加されました。

これは必ず、書面によりされる必要がありますが、電磁的記録によりされた合意も書面による合意とみなされます。

よって、電子メールによりされたものであっても時効の完成猶予は認められることになります。

合意によって猶予される期間は1年、又は双方で1年未満の期間を定めたときはその期間となります。

また、必ずしも双方合意がされたときのみ時効の完成猶予事由となるかというとそうではなく、当事者の一方から協議の続行を拒絶する通知した場合でも6か月の時効の完成猶予期間が認められることになります。

当事者 猶予期間
双方書面で合意 最長1年
一方から書面で協議の続行拒絶通知 6か月

2.再度の合意

協議を行う旨の合意は一度限り認められるものではなく、時効の完成猶予期間中に再度協議を行う旨の合意を行うことにより通算5年間まで協議を行う旨の合意による時効の完成猶予が認められることになります。

ここで、注意しなければならないのは、民法150条の催告による時効の完成猶予期間の6か月中に「協議を行う旨の合意」を行っても再度の時効の完成猶予は生じないという点です。

また、協議を行う旨の合意による時効の完成猶予期間中に民法150条による催告を行ったとしても、新たな時効の完成猶予事由は生じない点も注意が必要です。

民法150条1項

催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

2項

催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

151条1項

権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次の掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は完成しない。

  • その合意があった時から1年が経過した時
  • その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
  • 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときはその通知のときから6か月を経過したとき

2項

前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成がされなかったとすれば時効が完成すべきときから通じて5年を超えることはできない。

3項4項5項略

参考文献:有斐閣「判例六法」

3.消滅時効の二重期間化と契約責任との関連性

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1.消滅時効の二重期間化

条文をご覧いただいてからのほうがわかりやすいと思いますのでさきに条文を載せさせてもらいます。

民法166条1項

債権は次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

  • 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
  • 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

2項

債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができるときから20年間行使しないときは時効によって消滅する。

3項略

参考文献 有斐閣「判例六法」

新しく5年間の消滅時効が追加されたことで、短期消滅時効(旧法170~174条)が廃止され、商法旧522条も廃止されたことにより商行為によって生じた債権もまとめて新166条1項によって処理されることになりました。

では、166条1項①の権利を行使することができることを知った時とはどういうときを指すのでしょうか。

例えば、売買契約が成立した時の代金請求する場合は権利を行使することを売買契約成立時に把握しているから売買契約成立時から5年間で消滅時効にかかることになります。

また、規約などで期限が設定されていた場合には、その規約を知っていた場合には、期限が到来したときから5年間で消滅時効にかかることになります。

2.契約責任との関連性

民法566条

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときはこの限りでない。

参考文献 有斐閣 「判例六法」

a.瑕疵担保責任の変更点

関連性を述べる前に、売買契約上の瑕疵担保責任の変更点に触れておきます。

旧法で瑕疵担保責任とされていたものが契約内容の不適合責任と名称がかわり、以前条文にあった「隠れた」という要件もなくなっている。

、また、損害賠償の範囲についても、以前は信頼利益に限定されていたものが、債務不履行責任に基づく損害賠償請求権の範囲に関する一般規定を適用されることにより、履行利益まで拡大されている点に注意が必要です。

b.除斥期間と消滅時効

以前からあった1年の除籍期間については、顕在であるが、不適合の事実を通知しなければ権利を失うとされている点に注意が必要です。

不適合の事実を通知した場合には1年で消滅しないことにはなるが、この場合にも民法166条の影響が及ぶことになります。

不適合の事実を通知した時に「権利を行使することができることを知った」と評価され、権利はそれから5年を経過することで消滅することになります。

もし、通知をしなかった場合や権利行使ができるときから10年以上経過したときに契約不適合が顕在化した場合はなすすべがないのでしょうか。

そのような場合でも不法行為に基づく損害賠償請求をすることは可能であり、この場合の時効期間は旧法とおなじの「損害および加害者を知った時から3年間」となります。

4.人損と物損との消滅時効期間の違い

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1.紛らわしい条文の整理

民法724条

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

  • 被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
  • 不法行為の時から20年間行使しない時

民法724条の2

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

民法167条

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。

参考文献 有斐閣「判例六法」

条文が似ていて把握しづらいですが、724条を補正する724条の2、166条を補正する167条これらは時効期間を同じようにする補正を行っているだけかと考えます。

まとめると、

権利行使できることを知ったとき 5年

損害又は加害者を知った時 3年補正して5年

権利を行使することができる時 10年補正して20年

不法行為の時 20年

2.財産も同時に侵害された場合

改正案の審議過程では

  • 生命・身体という被侵害法益の重大性
  • 生命・身体が侵害された場合に早期に損害賠償請求権を行使することの困難さ

が挙げられていました。

1の理由から考察すれば、生命・身体と同時に財産が侵害された場合であっても、財産は生命・身体ほど重大ではないから消滅時効期間は10年になると考えられます。

2の理由から考察すれば、財産だけでなく、生命・身体も同時に侵害されているため、侵害された行為全体について早期の権利行使は困難であると考えられます。

まとめ

注意すべきポイント

民法改正の時効に関してまだ解釈として確定していない部分もあるため、今後、施行されてから新たな発見もいろいろでてくるかと思われますので、いろんな判例など注視していく必要があるかと思います。

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