最近耳にする再生可能エネルギー条例とは?|鳥羽市・志摩市等

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目次

1. 再生可能エネルギー条例の背景と目的

再生可能エネルギーの導入が全国で進むなか、発電施設の開発に伴う自然環境や地域景観への影響が懸念されています。三重県鳥羽市では、美しい海や山、伊勢志摩国立公園などの自然資源を抱える地域として、この問題に早くから向き合ってきました。
その答えとして生まれたのが、「鳥羽市における再生可能エネルギー発電事業と自然環境等の保全との調和に関する条例」(通称:再エネ条例)です。条例の目的は、再エネの導入を妨げるのではなく、自然環境と住民生活とのバランスを保ちながら持続可能なエネルギー社会を実現すること。豊かな自然に囲まれた鳥羽だからこそ、地域全体で調和を図る仕組みが必要とされているのです。

2. どんな事業が対象になるのか?条例の適用範囲

この条例は、すべての再エネ事業に適用されるわけではなく、一定規模以上の設備を対象としています。主な対象は以下のとおりです。

  • 敷地面積1,000㎡以上、または出力50kW以上の太陽光発電
  • 高さ10mを超える風力発電設備
  • 発電設備を伴うバイオマス発電事業
鳥羽市再生可能エネルギー条例運用マニュアル

さらに、条例に該当しない小規模な事業(例:20kW以上50kW未満)に対しても、標識設置や住民への配慮を「努力義務」として求めています。これは、仮に規模が小さくても地域に与える影響は無視できないため、トラブルの未然防止を目的とした措置です。

3.再生可能エネルギー条例の手続きの流れ

(1)事業開始の第一歩は「事前相談」から
再エネ発電事業を計画した場合、最初に行うべきは鳥羽市環境課への「事前相談」です。ここでは、事業区域の地図や現況写真、土地の登記事項証明書などを提出し、事業内容の説明を行います。
この段階で、事業地が「事業抑制区域」に該当しているかが判断され、自然公園、埋蔵文化財包蔵地、土砂災害危険区域、水源地などに該当する場合は、市から事業抑制の依頼を受けることがあります。この要請に対しては、事業者が文書で回答し、必要に応じて計画の見直しや中止の判断を行うことになります。

(2)市と地域との丁寧な調整が求められる「事業計画調整」
事業を進めるうえで要となるのが、市との「事業計画調整」です。事業者は最大で45種類もの資料を提出し、環境や景観への配慮、工事の方法、撤去・処分の計画まで幅広い視点から事業の内容を明確にしていきます。
特に、事業区域の土砂流出リスクや、生活環境・景観への影響、将来の撤去費用の積立状況などがチェックされ、市は必要に応じて事業計画の補正を求めます。ここまでの準備を経て初めて「調整完了通知書」が発行され、次の段階に進むことができます。

3)住民説明会での対話と理解が鍵
市からの通知を受けたら、事業者は必ず地域住民等に対する説明会を開催します。日時や場所の告知、資料配布を行ったうえで、地域からの意見を受け付け、意見書の提出を促します。提出された意見には「見解書」で回答し、それを再度地域に説明。最終的には「対応状況報告書」として市へ提出し、地域住民の理解が得られたことを確認しなければ、工事には着手できません。
このプロセスは、単なる形式的な手続きではなく、地域と信頼関係を築くための大切な対話の機会とされています。
住民の理解が確認されると、いよいよ工事に着手できますが、ここでも細かいルールが定められています。工事の開始、中止、再開、完了の各段階で市への届け出が必要であり、監視員による現場確認も行われます。さらに、工事中および運用中には、指定の標識を事業区域内の見やすい場所に掲示しなければなりません。
また、事業開始後は毎年、市へ報告書を提出する義務があり、保守点検状況、景観保全の取り組み、撤去費用の準備などが審査されます。市は現地調査も実施し、不備があれば指導・助言を行い、必要に応じて勧告や違反事実の公表も可能です。

4.作成する必要がある書類の一覧

  • 事業抑制依頼回答書 (様式第2号)
  • 事業計画協議申出書 (様式第3号)
  • 事業概要書 (様式第4号)
  • 立地環境に関する調査概要書
  • 保守管理に係る計画書 (様式第6号)
  • 生活環境及び景観保全に関する計画書 (様式第7号)
  • 撤去及び処分に関する計画書(様式第8号)
  • 事業抑制区域の対策に関する申出書 (様式第9号)
  • 事業計画調整完了申出書 (様式第11号)
  • 地域住民等説明会開催報告書 (様式第13号)
  • 地域住民等意見書 (様式第14号)
  • 地域住民等意見書概要書 (様式第15号)
  • 見解書 (様式第16号)
  • 対応状況報告書 (様式第17号)
  • 再生可能エネルギー発電事業計画届出書 (様式第18号)
  • 再生可能エネルギー発電事業計画変更届 (様式第19号)
  • 工事(着手・中止・再開・完了)届出書 (様式第20号)
  • 工事期間中に設置する標識 (様式第23号)
  • 運用期間中に設置する標識 (様式第24号)
  • 標識設置届 (様式第25号)
  • 再生可能エネルギー発電事業に係る閲覧申出書 (様式第26号)
  • 事業実施状況報告書 (様式第28号)

※その他位置図、求積図、配置図、縦横断図、排水流域図、流量計算等必要な書類は多岐にわたります。当事務所なら全部お任せいただけます。

5. まとめ

「地域とともに進める再エネ」が市のスタイル
鳥羽市・志摩市の再エネ条例は、再生可能エネルギーの導入を単なる経済活動として捉えるのではなく、地域の自然環境、景観、暮らしとの調和を重視した先進的な取り組みです。条例の目的は、再エネ事業そのものを否定するのではなく、「どうやって地域と共生できるか」を問いかけることにあります。

事業者にとっては多くの手続きと丁寧な調整が求められますが、それは結果的に住民との信頼構築とトラブル防止につながります。そして何より、地域の理解と協力を得て進められる再エネ事業は、長期的な安定性と持続可能性を持ちます。

エネルギーの未来は、地域とともに育てていくもの。鳥羽市のこの条例は、全国の自治体や事業者にとって、再エネ導入と地域共生のヒントとなる制度です。

当事務所では、再生可能エネルギー条例の手続きの取次ぎ及び関連条例の手続きまですべて執り行っております。

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